2008年02月07日

元日 そして「孤」 シングル・セル

今日は、新しい年の初め、お正月です。

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 旧暦のお正月ですから新月、数日前までは
明けの明星の金星と木星の近くに細い月の姿が
東の空にあったのですが、今朝は金星と木星
だけでした。



 作家の増田みず子の作品で「シングル・セル」
という小説があります。1986年に泉鏡花文学賞
を受賞した作品です。私の大好きな小説の一つ
です。シングル・セルとは、一般には単細胞
ですが、この小説では孤細胞と言い表しています。

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 この小説の中から幾つか引用します。

  …弧細胞です。孤独の弧。植物や動物をね、
 ばらばらにほぐして、一個ずつの細胞状態に
 してしまう。余分なものを除いてしまった
 純粋な細胞にしてやると、いろいろと命の
 しくみが見えてくる。

  …科学処理によってシングルセル化した
 細胞も、そのまま放置しておくと、二個三個と
 再び寄り添い、集合して、やがて固まって
 しまう。だからそうさせないためには、攪拌
 し続けねばならない。

  …シングルセル化した細胞は、条件さえ整って
 いれば、確かにそれ一個で活き続けるから、
 独立した生物とも言えるが、しばらく生きて
 るうちに、細胞壁が異常に肥大して、つまり
 身を守るカラが厚くなり過ぎて、やがて窒息
 死してしまう。外から栄養分を取り入れる
 ことができなくなってしまうのだ。細胞壁が
 厚くなるのは、もろい中身を守るための、
 過剰防衛である。

 街の中で、たくさんの人がいるのに、でも
互いに他人で、まったく関係を持とうとはせず、
無関係なまま。満員電車の中、混雑したスーパー、
横断歩道の青を待つ一群…互いに無関心のままで、
都会の中で多くの人が 集中しているにも関わらず、
孤独を感じることがあります。
posted by student at 19:59| 日記